IWASEコラム

受託製造のメリットと3つのスタイルーOEM・ODM・PBの違い

受託製造とはどのような製造手法でしょうか。受託製造として3つのスタイルが存在しますが、それらはどのようなものでしょうか。受託製造によって得られるメリット、OEM・ODM・PBといった受託製造に対して使われる用語について紹介します。

受託製造とは

受託製造とはどのようなものかを考える前に、製品がつくられ販売されるまでの過程を見てみましょう。製品は次のようなプロセスを経て消費者のもとへ届けられます。

  1. 企画
  2. 開発
  3. 設計
  4. 生産
  5. 物流
  6. 販売

このなかで、企画・開発・設計は「考える」パート、生産が「つくる」パート、物流・販売を「売る」パートとして分けることができます。受託製造とは何かを説明するうえで、重要となるのがこの3つのパートです。

受託製造は「製品ができあがるまでの過程の一部を引き受けて製造すること」を指します。これには「つくる」パート、生産だけを引き受ける場合と、「考える」パートまで含めて引き受ける場合とがあります。

受託製造とは、製品がつくられ消費者のもとへと届くまでのプロセスのうち、生産のみ、または企画開発から生産までを引き受けて製造を担当することです。

受託製造の3つのスタイル

受託製造には3つのスタイルがあります。それぞれどのような特徴を持つのか見ていきましょう。

OEMで製品をつくる

「Original Equipment Manufacturing」の略称で、日本においては「相手先ブランド製造」を意味するのがOEMです。OEMでは、受託側は企画や開発には関わらず、生産のみを引き受けることになります。 企画開発力、販売力を持つ企業が、生産力を持つ企業に製品製造を委託することで、それぞれにメリットが生まれます。OEMの場合、受託側は「つくる」パートの生産のみに専念するため、分業をすることでそれぞれの専門性がより高くなるのです。

ODMで製品をつくる

ODMは「Original Design Manufacturing」の略称です。製造に関する分担がOEMと多少異なり、デザイン(設計・開発)から生産までを引き受けます。

「考える」パートのうち、製品の設計に関することを「つくる」側の受託企業が受け持つことで、仕様や詳細に関する連絡が密になり、行き違い、伝え漏れなどを防止できるのがメリットです。試作と検証の繰り返しについてもスピードアップが図れます。

PBとして製品をつくる

PBは「Private Brand」の略称で、「PB商品」とも呼ばれています。

小売店・卸業者が独自ブランドとして企画販売する形態で、OEM・ODMによってつくられるのがPB商品です。OEM・ODMが「製造を引き受ける」という受託側=生産側主体の言葉であるのに対し、PBは「製造を委託する」という委託側=企画販売側が主体の言葉です。生産側が使う場合は、「持ち込み企画」のような意味合いで使われることもあります。

受託製造が優れた製品を生み出すワケ

このようにさまざまなスタイルで受託製造が行われるのは、第一に分業による効率化が目的にあるからです。受託製造によってどのように効率化できるのでしょうか。

分業による効率化が特に期待できるのが、専門性の高い分野です。専門分野では、製造の要となる設備を他製品の製造に応用できない場合も少なくありません。そのため、生産に必要な機器・設備・治具・計測器などを取りそろえるのに大きなコストが必要となります。

このとき、これらの設備や機器などをすでに持っている、その分野における生産のプロに「つくる」パートを担当してもらうのが受託製造です。これにより、委託側は大きな初期費用を必要とせず、設備投資によるリスクも回避できます。

分業のメリットはそれだけではありません。根本的な部分として、製造を受託する側は「つくる」専門家であるということです。受託側は設備や機器だけでなく、その取り扱い方や製造に関するさまざまなノウハウと高い技術力を持っています。
また、効率的な製造工程を組むことができ、培った経験から品質管理のポイントも熟知しています。生産工程の標準化やマニュアル作成が浸透している場合が多く、人為的ミスの発生も最小限に抑えられています。このように、「つくる」専門家が製造することで、より優れた製品を完成させることができるのです。

受託製造では設備や機器の導入といった時間を省き、設備の取り扱い方を知る作業者がいるため、生産開始までの時間も短縮されます。また、委託側の社内で生産に人員をまわす必要もありません。こうした人員調整が不要であることも、生産開始までの時間短縮につながっています。
これに加え、受託側は生産に関するノウハウを持っていることから、ポイントを押さえた生産ができ、目標個数を生産するまでの時間も短くなります。これらのことから、「つくる」専門家が製造を担当することで、製品が市場に出るまでの時間全体が短縮されるのです。

このように、受託製造にはさまざまなメリットがあります。生産管理において重要な3要素といわれる、品質・コスト・納期(QCD)すべてにメリットがある仕組みなのです。 受託製造は委託側・受託側双方に魅力的なシステムです。ただし、リスクがないわけではありません。たとえば、委託側にとっては初期費用や設備投資のコストが抑えられ、優れた製品を生み出す可能性が高くなる反面、自社でノウハウや技術力の蓄積がしにくい点がリスクになります。また、受託側にとっては製造のプロとして高い技術力を評価してもらい、業績を伸ばすこともできる一方で、自社製品の製造販売も検討している場合に、製品が市場に定着浸透しにくいというリスクがあります。大きなメリットに対するリスクとしては些細(ささい)なことと判断できるかもしれませんが、そうした一面があることは認識しておきましょう。

効率よく優れた製品を生み出す受託製造という選択

受託製造の仕組みとOEM・ODM・PBそれぞれの意味、受託製造がどのように品質向上につながっているかを紹介しました。 「つくる」という部分を別の企業が担当するのが受託製造です。OEM・ODM・PBと呼び方や製造プロセスは違っても、「つくる」の部分をその分野における生産のプロが行うことが共通しています。コスト・品質・納期それぞれの面でメリットがある受託製造は、効率よく優れた製品を生み出すプロセスなのです。うまく活用して業務効率アップの方法として検討してみましょう。

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この記事を書いた人

藤井 元人

ウェルネス事業部

口に入れる食品原料や製品取り扱うウェルネス事業部に所属しています。
いろいろなモノを口に入れすぎて、最近では植物エキスの苦味も美味しく感じるようになりました。

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