美容に関心を持つ女性であれば、一度はスクワランという言葉を耳にしたことがあるでしょう。
スクワランは「スクワランオイル」として販売されているのが一般的です。皮膚刺激がほとんどなく、また肌の表面に膜をつくることで水分の蒸発を抑える働きをするため、保湿力を期待する化粧品の多くに使用されている成分でもあります。
また、毒性に関する報告がないことや、刺激性、アレルギー性がほとんどないことなどから、赤ちゃんの肌にも使用が可能とされています。ここでは、スクワランの成分や注目される作用について紹介します。
スクワレンからつくられるスクワラン
スクワレンとスクワランという非常に似かよった言葉に、混乱する人も多いでしょう。
スクワランとは、スクワレンに水素添加して、安定性を高めたものを指します。実はスクワレンは不飽和炭素水素と呼ばれるもので、酸化されやすく不安定なのです。そこでスクワレンに水素を添加し、安定させたものがスクワランです。
スクワレンは、人間の肌にも少量ですが含まれています。汗などの水分と混じり合うことでスクワランに変化し、油脂となって肌の表面に膜(皮膜)を張って、水分を逃しすぎないように働きます。つまりスクワランは、私たちの肌を乾燥や紫外線から守る働きを持つ成分なのです。そのため、「天然のクリーム」とも呼ばれています。
化粧品などで使用されるスクワランは、深海にすむサメ類の肝油やオリーブオイル、小麦麦芽油などに含まれているスクワレンを、水素添加したものです。
スクワランの種類
私たちが美容成分として利用するスクワランには、大きく分けて「スクワラン」と「植物スクワラン」の2種類があります。
一般的にスクワランと呼ばれているものはサメ類の肝油由来で、オリーブオイルや小麦麦芽油、米ぬか油などからの抽出成分を原料としたものが植物スクワランです。どちらも機能は同じですが、植物スクワランのほうがオイル独特のぬめり感が少なく、肌になじみやすいという特徴があります。
そのため、近年では植物スクワランを使用した化粧品も増えてきているようです。
高い保湿性を支える成分に美容業界も注目!
スクワランには、肌に皮膜を張って水分を閉じ込めるエモリエント効果があり、スクワランを含有している化粧品には高い保湿性が期待できます。ここでは、肌を保湿する必要性についてみていきましょう。
バリア機能が高まる
肌が乾燥してぴりぴりしたり、皮がむけたりしたことはありませんか? 肌が乾燥している状態とはどういう状態なのでしょうか。肌が乾燥しているときは、角質細胞がはがれて角質層にすき間ができるため、水分が逃げやすくなっています。つまり、肌が乾燥すると外部からの刺激に敏感になり、肌あれや炎症を引き起こすきっかけとなります。健康で適度に保湿が保たれた肌は角質のバリア機能が働いているので、水分の蒸発や外部からの刺激を防いでいるのです。
ハリ・ツヤが出る
肌が乾燥するとハリがなくなるので、しわができやすくなり、さらにツヤも失われます。そのため、肌をしっかりと保湿することはハリやツヤを出すだけではなく、しわの出来にくい状態に保つことにもつながるといえるでしょう。
肌が明るくなる
うるおいのある健康な肌は、自ら生まれ変わり健康な状態を保とうとする働きをもっています。それがターンオーバーと呼ばれる機能です。ターンオーバーによって、肌にたまった老廃物を排出するほか、メラニンの定着を防ぐことができます。そのため日焼けした肌も、一定期間をすぎると日焼けする前の肌にもどるのです。つまり、保湿が正常に行われている肌は、肌色が明るく、くすみのない状態を保てるのです。
安全性が高くどんな肌質にも使用できる
スクワランは化粧品のほか医薬品の軟膏などにも使われている成分です。刺激性やアレルギー報告がほとんどないことから安全性が高いとされており、幅広い年代から支持されています。これまで行われたさまざまな調査のなかから、日本医薬品添加剤協会による調査結果を見てみましょう。
1.反復投与毒性
反復投与毒性とは、ものを食べたり飲んだりするのと同様、口からスクワランを投与した際の毒性を検査したものです。
2.局所刺激性
局所刺激性とは、スクワランが生体組織と接触した場合にどのような影響を受けるかという検査です。
3.ヒトにおける知見
動物だけではなく、ヒトに対して行った検査報告もあります。
健康な皮膚を持つ成人(男性144名・女性88名)と皮膚疾患患者(男性2名・女性25名)にスクワラン原体のパッチテストを実施し、紅斑と浮腫について調べるという内容です。その結果、健康皮膚に対しての陽性反応は24例、皮膚疾患に対しての陽性反応はわずか5例であり、健康皮膚に対しては浮腫も見られなかったと報告されています。
うるおい持続を目的にするならスクワランを活用しよう!
「お肌の曲がりかど」という言葉があるように、もともと肌の中にあるスクワレンは20~30代をピークに減少していきます。
スクワレンが減少してしまうと皮脂膜を十分に維持しにくくなるため、外部からの刺激や紫外線の影響を受けやすくなります。その結果、肌が乾燥しやすくなり、小じわやたるみ、炎症や痒(かゆ)みといったトラブルが起こるのです。こうした症状を緩和するためには、肌の保湿性を維持することが期待できるスクワランの活用がおすすめです。
スクワランは安全性が高い成分なので、敏感肌やアトピー性皮膚炎の人でも使用が可能とされています(ただし、使用にあたっては症状により医師の指示を仰ぐことをおすすめします)。
スクワランには、べたつかず肌になじみやすい性質もあります。うるおい不足が気になるようであれば、ぜひスクワランを取り入れてみてください!