姿かたちがそっくりでも、販売するブランドや店舗が違うものは、「OEM製品」と呼ばれることがあります。
OEMとはどのような意味なのでしょうか。OEMの意味と役割、OEMによってものをつくるメリットなどについて紹介します。
OEMとは
製造業に従事する人の多くは、OEMという言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
OEMはあらゆる分野で活用されているので、製造業以外の業種の人でも聞いたことがあるかもしれません。
OEMは、「Original Equipment Manufacturing」の略称で、日本語では「相手先ブランド製造」のように訳されます。
これはどのような製造方法なのでしょうか。
製造された製品が消費者の手に届くまでには、「考える」「つくる」「運ぶ」「売る」という4段階があります。
「考える」は企画・設計・開発、「つくる」は生産、「運ぶ」は物流、そして「売る」は販売の工程です。
OEMでは、この4段階のうち「つくる」の部分、すなわち生産の工程をほかの企業に委託して製品を完成させます。
その分野の生産を得意とする企業に生産を委託することで、より優れた製品を世に送り出すことができる仕組み、それがOEMという製造方法です。
OEMのメリット
OEMには委託側・受託側の双方にメリットが生まれます。
OEMを委託する側のメリット
コスト削減とリスク回避
新製品の生産を開始するとき、それまでの製造方法や生産設備ではつくることができない場合があります。新製品のために生産設備を整えようとすると、大きな費用が必要となります。また、既存の生産量を確保しながら増産を行うためには、従業員も増やさなければなりません。こういった設備投資や追加雇用は大きなコストとなるだけでなく、万が一新製品が軌道に乗らなかった場合には大きな損失となります。
OEMによりこれらのコストやリスクを抑えることができるのです。
知名度の向上
OEMにおける役割分担を考えると、委託側は企画販売、受託側は生産を担当していると考えることができます。すでにブランドを持っている委託側が販売する場合、市場投入時から製品にブランドの知名度を上乗せして販売できるため有利です。
生産量をコントロールできる
生産量を増減させたいとき、限られた自社の人員を調整するのは容易ではありません。しかしOEMであれば、生産に関しての人員調整が必要なく、需要の変動に合わせた柔軟なコントロールが可能です。
分業により専門性が向上
生産に関する人員調整が必要ないため、現在の生産体制を維持しつつ自社では次の製品の開発に専念できます。
OEMを受託する側のメリット
製造技術力が磨かれる
得意分野の製造を受託した場合、その分野での製造技術に磨きがかかり特化企業としての知名度が上がります。また受託内容によっては技術の幅が広がり、新たな分野とのつながりに発展する可能性もあります。
物流・販売ルートの確保
生産に関する技術や設備を持つものの、物流のノウハウや販売ルートを持たない企業は少なくありません。生産に特化した企業にとって、物流と販売を担当してくれる企業と協同で生産販売ができるOEMは大きなメリットとなります。
生産量増加による増益
OEMを受託するということは、生産量を確保する間口を広げていることになります。技術や設備、人員などを持て余すことなく、生産量増加によって利益を確保することができるのです。
委託側・受託側双方のメリット・デメリット
OEMは、「考える」「つくる」「運ぶ」「売る」の4段階において、互いの得意な部分をそれぞれが受け持つことといえます。これにより、良い製品をつくることができると同時に、販売力や知名度が向上し、双方の利益へとつながります。このようにOEMは双方にメリットのある仕組みなのです。
では、OEMで製造することにデメリットは全くないのでしょうか。
例えば、委託者側は実際の生産には携わらないため、生産工程についての技術を蓄積することができません。
これは委託者側にとってデメリットだといえます。また、受託者側にとってOEMで生産を受託することは、市場における自社ブランドの知名度向上の機会を逃しているといえます。これも長期的に考えると、受託者側のデメリットだといえるでしょう。
このような点がデメリットと捉えられる面もあります。しかし、OEMの特徴が、より良い製品を市場に提供することで委託側・受託側双方が多くのメリットを得やすいことであると、多くの企業に認識されています。
OEMが盛んな業界とは
あらゆる分野でOEMにより優れた製品が生み出されています。
特に次のような分野では、OEMによりつくられたものが身近なところに届けられています。
自動車業界
自動車業界はOEMが盛んで、よく知られています。外観や性能がほぼ同じで、エンブレムやロゴだけが異なる車種が別の企業から販売されている例は多数あります。軽自動車の生産力を持つ企業と、販売ルートの広い企業のOEMによる協力販売が代表的です。
家電業界
パソコンの製造を得意とする企業が、エアコンや冷蔵庫などの白物家電に関して、OEM供給を受けていたことは有名です。近年では、従来OEMの受託側であった生産力を持つメーカーが、OEM生産を受託しながら自社ブランドとして販売する例も増えています。そのため姿形は同じなのに販売元が違う商品がよく流通しています。
ホームセンター業界
ホームセンターでは、自社や自グループでのブランドとしてさまざまなものを取り扱っています。しかしそのほとんどがOEMによって生産されています。プラスチック収納ケースがその代表例です。
化粧品業界
一般にはあまり知られていませんが、化粧品業界でもOEMが盛んです。化粧品はブランドによる知名度や企画力が購買意欲につながりやすく、さらに製品としての実力も重要です。そのため、分業による高い専門性が発揮できるOEMが非常に適している分野といえるのです。OEM事業部を構える大手化粧品メーカーもあり、多くの商品がOEMによって生産され店頭に並んでいます。
OEMは企業が協力して優れた製品をつくるプロセス
OEMとはどのような製造方法か、どのようなメリットがあるのかについて紹介しました。
世の中にはOEMによって生み出された製品が、身近なところにもあふれています。「考える」ことを得意とする企業、「つくる」ことに特化した企業、「売る」ための方法を持っている企業。こういった企業が協力し、優れた製品を生み出す手法、それがOEMなのです。
いろいろなモノを口に入れすぎて、最近では植物エキスの苦味も美味しく感じるようになりました。